花森書林のあれこれ

神戸・元町の古本屋、花森書林(はなもり・しょりん)のあれこれについてを記録したものです。

<『ノロウェイの黒牛』取り扱いはじめました> さとうゆうすけさんへのインタビュー ~前編~

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    2019年3月、神戸の出版社BL出版より世界のむかしばなしのシリーズの一作として
ノロウェイの黒牛』が刊行されました。

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2019年3月にBL出版から『ノロウェイの黒牛』が出版されました。文章はなかがわちひろさん、絵はさとうゆうすけさんです。さとうゆうすけさんは花森書林移転前の旧店舗でも何度も個展を開催いただいたご縁ある作家さんで、 この度の絵本『ノロウェイの黒牛』の完成をたくさんの方と喜び分かち合っています。
 当店でも『ノロウェイの黒牛』を取り扱いさせていただくことになり、
それにあたって、今回、編集者の鈴木加奈子さんご協力のもと、さとうゆうすけさんへのインタビューをお願いいたしました。

 絵本をすでにお持ちの方も、初めての方も絵本製作の舞台裏をじっくりお楽しみくださいませ。

 

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〇本書がさとうさんの絵本デビュー作となりますが、
これまでの活動から、絵本の制作のはじまりについて
改めてお伺いできたらと思います。

 

 子供のから絵本や童話が好きで、自分でも作りたいとずっと思っていました。中学生の時に最初の絵本を作りました。それは北欧の昔話を題材にしたもので、その頃からやりたいことは変わっていないなと思います。絵本作家リスべス・ツヴェルガーの本を読んでこんな繊細な表現が絵本の世界にはあるのか、と憧れました。
 独学で絵を描き続けていましたが、MOEに投稿を始め掲載されたことをきっかけに、絵本の出版を夢見るようになりました。また、描きためた作品を個展やグループ展で発表するようになりました。

 グリム童話アンデルセン童話などの昔話を題材に絵を描いていましたが、個展やグループ展で発表する機会をいただき、東京、名古屋、岐阜、京都、神戸などで展示してきました。
 絵本を作りたい、昔話を作りたいと公言していたところ、展示を見てくださった編集者の方から、昔話絵本を作りましょうというお話をいただき、それが本作に繋がっていきました。

 

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〇この物語を最初に読んだときの印象や感じた魅力を教えてください。

 

 ノロウェイの黒牛は美女と野獣を思わせる物語です。しかし、王子の呪いが解けて、めでたしめでたしとハッピーエンドになるわけではなく、そこから主人公の娘の一人旅が始まります。この後半の展開が独特でまた現代に通じるテーマだと思い、この物語に惹かれました。

 

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⚪︎どのように絵のイメージをふくらめ、制作を進めていきましたか。

 

 物語には惹かれましたが、牛が主人公になることには少し悩みました。かっこいい黒牛が描けたらこの物語を描いていけるのではないかと思い、黒牛のイメージ作りから始めました。
 そこから娘や王子や魔女といったキャラクターのイメージを固めていきました。
描く場面については、物語を読んでおよそのイメージは頭の中にありましたが、ページの関係から全てを取り上げるわけにはいかなかったため、どこをカットし、どこを採用するか決めるのが難しく、試行錯誤しました。

 今まで様々なタッチで絵を描いてきたため、どのような画材で表現した世界がこの絵本に合うのかにも頭を絞り、試作を繰り返しました。

 

 

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⚪︎昔話を絵にするときに、面白かったところ、難しかったところを教えてください。

 

 昔話は表現がとても簡潔です。美しい場面も恐ろしい場面も摩訶不思議な場面も、あっさりと一言で語られます。読者はそれを頭の中で想像するわけですが、思い描く場面は人それぞれで、本当のところは誰にもわかりません。
しかし、実際に絵を描くとなると、1行の文章から、そこには何があって、どんな天候で、登場人物はどんな表情をしているのか、ひとつひとつを具体的に考えなければなりません。
 物語の世界を細部にいたるまで想像し、一から創り上げていくことは、絵本を描く作業の一番おもしろいところであり、同時に一番難しいところでした。

 

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⚪︎特にお気に入りの場面があったら教えてください。

 

 娘を背に乗せた黒牛が、荒れ模様の空を背景に草原を歩いていく絵は、お気に入りの場面に仕上がりました。だんだん崩れていく天候は二人の行く先の試練を現しているようです。
絵を描くとき、そこに具体的には描かれない、感情や感覚、空気や光を表現したいと思っています。この絵では、草原を吹き抜ける風とその冷たさをどこかに感じていただけたなら嬉しいです。

 

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⚪︎特に手強かった場面があったら教えてください。

 

 今まで、動物を擬人化した絵を中心に描いてきたため、人物の表現には苦労しました。絵ごとに主人公の顔が変わってしまうのです。
また、黒牛は王子が呪いにかけられた姿なのですが、黒牛と王子が同じキャラクターなんだということを、その瞳で伝えたいと思っていました。
ベッドの中で耳を澄ます王子の瞳と悲しく優し気な黒牛の静かな瞳に、共通した何かを表現できないかと苦心しました。

 

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***さとうゆうすけさんへのインタビュー、後編に続きます。***

 

 

 

ノロウェイの黒牛』なかがわちひろ(文)さとうゆうすけ(絵)

 BL出版 1600円+税

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むすめと呪われた黒牛の恋
イギリス・スコットランドに伝わる
切なくも美しいむかしばなし
身の毛もよだつ怪物とされる黒牛と結婚してもいいというむすめ。黒牛はむすめを背にのせ、果てしない旅に出ます。くらい森をぬけ、さびしい荒れ野をこえ、そしてその途中、黒牛にかかった呪いを知ったむすめは…


***花森書林 絵本購入特典***

花森書林で絵本をご購入いただきました方には特典として、
過去の展示DMとさとうさんのサインイラストカードをお渡しさせていただいています。 すでに当店でご購入いただいた方にも追って必ずお渡しいたしますのでご安心くださいませ。

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***花森書林 さとうゆうすけさん個展***

2019年11月21日~12月9日
花森書林展示スペースにてさとうゆうすけさんの個展を開催いたします。
ノロウェイの黒牛』の原画展示も行います。是非ご高覧くださいませ。

 

 

花森書林(はなもり・しょりん)

650-0022

神戸市中央区元町通3-16-4

078-333-4720

hanamoribooks@hotmail.com

 https://hanamorishorin.com/

 

 

**本の買取りいたします。一冊から大量まで。お気軽にご連絡くださいませ**

ご近所さま物語展 はじまりました

 3/16より花森書林、展示スペースにて「ご近所さま物語展」がはじまりました。

 

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ご近所さま物語展の展示風景です。

 花森書林は路地裏にあります。この路地を説明する際に目印としてご近所の店舗さんの名前を出すのですが、実際、周囲には長年営まれているお店を含め信頼厚い個人商店も多く、町歩きにたのしいところだなと日々感じています。

 さて、そのご近所さまですが雑誌やWEBサイトなどで度々取り上げられ、メニューや商品が写真や画像として出てくることはあっても、提供する方が表に出られることはありません。どんな人がそのお店を作っているのか、好奇心と興味をもって、今回8店舗のみなさまに写真撮影の承諾を得てお話を聞かせていただきました。みなさんそれぞれに哲学と美学をもって、真摯に仕事を全うされています。

 

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写真撮影は神戸在住のカメラマン、永田收(ながた・おさむ)さんによるものです。

 

 写真は神戸在住のカメラマン、永田收さんにお願いいたしました。コラムとして執筆してくださったのは「サウボナ・ミュージック」のサウボナさん、『神戸、書いてどうなるのか』などの著者で漫筆家の安田謙一さんです。みなさん丁寧に店主さんのお話に耳を傾けてくださいました。

 

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文章は神戸在住の漫筆家、安田謙一(やすだ・けんいち)さん、サウボナ・ミュージック主催のサウボナさんにお願いいたしました。

 そして今回花森書林の企画に快くご承諾いただいた8店舗のみなさま(「青柳」、「くま食堂」、「ゲンジ」、「香美園」、「Tapir」、「喫茶チェリー」、「BITTER END」、「喫茶ポエム」)に心より御礼申し上げます。

 

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厨房内や料理される様子なども撮影させていただきました。

 写真から、文章からご近所さまの旨味をたらふく感じていただき、実際にご近所さまに足を運んでいただけますと幸いです。

 

<ご近所さま物語展>

展示は3/29(金)17時まで(営業は19時まで)

火・水定休

13時~19時

 

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花森書林

650-0022

神戸市中央区元町通3-16-4

078-333-4720

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本の買取いたします。1冊から大量まで。

お気軽にご連絡お願いいたします。

 

椿﨑和生小品展 はじまっています

 2/15(金)より椿﨑和生(つばきざき・かずお)さんの作品展が花森書林で始まりました。

椿﨑さんの素朴な中にユーモアと含蓄ある作品が書店全体を力強く包み込んでいます。

まさにご本人そのもののような味わい深い作品ばかり。

 

 すでにたくさんの方にご高覧いただいていますが、続々と旅立っている作品もありますので記録の意味を兼ねてここでご紹介したいと思います。

 

 ***店内に広がる椿﨑作品***

 

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タイトル:『泪』 泣いたときに見える景色を作品にされています。

 

 

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タイトル:『熊』 木彫りの熊がさらに彫られて人間に(!)衝撃の作品です。

 

 

 

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タイトル:『船』 今回は木製の作品を中心に並べていただいているのですが、どこかほがらかであたたかい椿崎作品。

 

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タイトル:『レリーフ3』 どう捉えもらってもええんよ、という椿崎さん。

 

 本日も何点か追加でお持ちいただきましたが、その一つ一つが面白くて興味深い作品ばかりです。ぜひご覧に足をお運びくださいませ。

 

 

<椿﨑和生小品展>

 展示は2/28(木)17時まで(営業時間は19時まで)

火・水定休

13時~19時

 
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花森書林(はなもり・しょりん)

650-0022

神戸市中央区元町通3-16-4

078-333-4720

 

営業時間:13:00~19:00

定休日:火・水定休

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